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恋に落ちたら…

笑わない役者の省エネ演技が見もの



 肩をすくめて何かつぶやき、大きなため息をつく。
ビル・マーレーのあのため息は誰にもまねできない。
「一見すると怠けているような印象を受ける」というのが、『恋に落ちたら…』のジョン・マクノートン監督のマーレー評だ。
 満面の笑みを浮かべることなど、めったにない。
片方の眉を動かせば済む場面で、両方動かすなんてサービスは絶対にしない。
無表情ぶりはモナリザ級だ。
 でもマーレーは全然気合いの入っていない顔をしながら、一分の隙もない演技を見せる。
彼の表情を注意深く見ると、電流測定器の針のように感情を正確に表現しるのがわかる。
『恋に落ちたら…』でも、マーレーの省エネ型の演技は冴えわたっている。
役どころはマフィアのボス。
ひょんなことからロバート・デ・ニーロ扮する臆病な刑事と付き合うようになる。
 マフィアなんてマーレーに似合わない気もするが、このボスの趣味がスタンダップコメディーということもあって、なかなかさまになっている。
 マーレーとデ・ニーロが共演すると聞けば、誰もがヒット間違いなしと思うだろう。
マーレーによれば、共演は「ボビー(デ・ニーロの愛称)」のアイデアだったとか。
大スターのボビーを前にしても、まるで緊張している様子はない。
「ローマ法王につかつか歩み寄って、鼻をつまむことだって彼ならできそうだ」と、マクノートンは言う。
 しかし、この2人の組み合わせはどうもしっくりこない。
どちらもイメージと懸け離れた役柄に扮しているからだろう。
臆病な刑事役に挑んだデ・ニーロは、例によって全身全霊を傾けて臆病さを演じる。
内気さは内面で煮えたぎり、体中にうねりとなって表れ、ついには耳までうなだれてくる。
 一方のマーレーは、さらりとした自然体。
それでいて「私が君の夢を実現してあげよう」とささやくだけで、ぞっとするほどすごみがある。
そしてクライマックスにかけて、マーレーは信じ難い離れ業をやってのける。
デ・ニーロを完全に圧倒してしまうのだ。
それだけでも一見の価値があるだろう。

【1993.5.27】
監督 ジョン・マクノートン
主演 ロバート・デ・ニーロ
   ビル・マーレー



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# by toytoybox | 2012-03-28 17:11 | 大人の映画
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